『サンタの正体は“親”ではなく、“愛情そのもの”である』

さぁ良い子のみんな、集まれぃ〜。

ライズです。

今日はクリスマスイヴって記念日のようだ。
恐らくは日本全国の子供たちが、『昼間なんてどうでも良いから、早く夜になり明日になってくれ』と願う事であろう一日。


そんな日の、よりにもよって朝に、俺は居た。


どうして俺がここまで朝早く起きているのか。そして、どうして部屋の掃除をしているのか。

その理由など、問いただすまでも無い。


『家に恋人が来る』

これ以上の理由が、今の俺に必要だろうか。(反語)


まぁその事細かな内容をここで書くのは憚られるので、この件自体については“そういう事もあったよー”程度の報告で括る事にしよう。



今回の話はここからが本編である。


今日その人をJRの駅まで見送り、家に帰ろうとした時にふと妙な感覚が俺の胸によぎったのだ。


…………どうしてだろう。

変な話をするようで悪いが、今日はクリスマスイヴな筈だ。それは俺だって知っているし、現にその通りである。

なのに、どうしてだろう。


俺のクリスマスは、もうとっくに終わっている気がした――――。



“実感が無い”と言うべき感覚だろうか。いや、似ているが違う。

なのにどうしてだろう。

今日がクリスマスであるなどと、俺は理解できてはいないような気がした。


その奇妙な感覚の理由を色々と考えてみた。

今はもう、行きの時に大通りで見つけた変なビルの事までも忘れて、ただ考えていた。


見慣れた筈の道が流れていくのをただ視界の隅に移しつつも、この奇妙な感覚について悶々と問い続けるその姿を、端から見れば俺自体が奇妙と呼べたことだろう。


そしてついに、行き当たった。

どうして俺が“今日がクリスマスとは思えない”等と考えてしまったのか。


それは、『子供の時のように、夜を待つ必要が無かったから』だ。


イヴの夜に、わくわくしながら布団に潜る。

そして、次の朝には何者かによってプレゼントが置かれている。

まだ小さい時分には、白髭爺さんの正体を探ってやろうなどと考えた事もあった。



もちろん、今となっては全てを知っている。この日に裏で動く全てのからくりを、高校生ともなれば必然的に知るだろう。

だが、その情報を得ると同時に俺が置き忘れてきたものは、“クリスマスイヴそのもの”だったんじゃないのか――――?


そんな気持ちが俺の中を斡旋していくままに、俺は自宅へと辿り着いた。


何かを失ったような気持ちで、自分の部屋へと入る俺。

だが、それはなんと愚かな行為だったかを俺はすぐに知る事になる。


俺のベッドの上には、恋人からプレゼントされたマフラーが置いてあった。


それが、全ての“答え”だったのだ。



別に“深夜”だけがクリスマスイヴじゃない。

人間が人間へ愛情を表現してこそ、真のクリスマスイヴなんだ。


プレゼント然り、気持ち然り。


俺は自分の浅はかさを呪ったまま、そのマフラーをハンガーへと掛けた。



きっと俺は明日このマフラーを巻いて、恋人も来る文芸部室に行くであろう。

それが、俺の出した答えへの、自分なりの“証明”である―――――